あなたの家の「赤蜘蛛」、その正体は蜘蛛ではありません
ある日、大切に育てている観葉植物やベランダ菜園の葉の裏に、まるで赤い砂埃かサビのように見える、非常に小さな点々が無数に付着しているのを見つけた。そして、よく見るとその点々が、ゆっくりとうごめいている。この不気味な光景を前に、多くの人が「赤い蜘蛛が湧いた!」とパニックに陥ります。しかし、その正体は、実は「蜘蛛」ではありません。その多くは、「ハダニ」という、植物の汁を吸うダニの一種なのです。蜘蛛とダニは、同じ節足動物ではありますが、生物学的には全く異なるグループに属します。最も分かりやすい違いは、その脚の本数です。成体の蜘蛛の脚は8本ですが、ダニの仲間であるハダニの脚も同じく8本です(幼体は6本)。しかし、蜘蛛が肉食性で、アブラムシなどの害虫を捕食してくれる「益虫」であるのに対し、ハダニは植物の葉の細胞を破壊して汁を吸う、紛れもない「害虫」です。彼らが「赤蜘蛛」と呼ばれるのは、その体色が赤っぽく、非常に微細な蜘蛛の巣のような糸を出すことがあるためですが、これはあくまで通称です。ハダニによる被害は植物だけに留まらず、大量発生した際には、その死骸やフンがアレルゲンとなり、人間のアレルギー性鼻炎や喘息を引き起こす可能性も指摘されています。この二者を混同することは、対策を大きく誤る原因となります。蜘蛛は、あなたの庭の害虫を減らしてくれる頼もしい味方かもしれません。しかし、ハダニは、あなたの植物を枯らし、健康にまで影響を及ぼしかねない静かなる侵略者なのです。まず、あなたの敵が益虫の蜘蛛ではなく害虫のハダニであるという事実を正確に認識すること。それが、大切な植物を守るための、全ての戦いの始まりとなります。