キッチンや洗面所などの水回りで、体長1~1.5センチ程度の、茶色くすばしっこいゴキブリに遭遇したことはありませんか。多くの人がこれを「ゴキブリの赤ちゃん」だと思い込みがちですが、その正体は、れっきとした成虫の「チャバネゴキブリ」である可能性が非常に高いです。そして、もしあなたの家でこの小さな侵入者を見つけたとすれば、それは日本家屋でよく見かける大型のクロゴキブリを一匹発見するよりも、はるかに深刻で厄介な事態の始まりを告げる、極めて危険なサインなのです。なぜ、チャバネゴキブリはそれほどまでに恐れられるのでしょうか。その理由は、彼らが持つ、クロゴキブリとは比較にならないほどの、驚異的な「繁殖力」と「潜伏能力」にあります。クロゴキブリが屋外と屋内を行き来し、成虫になるまでに1年以上かかるのに対し、チャバネゴキブリは寒さに弱く、一度建物内に侵入すると、その中で一生を過ごします。そして、暖かい環境下では、わずか2~3ヶ月という驚異的なスピードで卵から成虫へと成長し、世代交代を繰り返します。一匹のメスが生涯に産む卵の数は数百個にも及び、好条件が揃えば、あっという間にその数はネズミ算式に増えていくのです。また、彼らは体が小さく平たいため、私たちが想像もしないような、わずかな隙間に潜り込むことができます。冷蔵庫のモーター部分や、電子レンジの内部、あるいはコンセントプレートの裏側といった、常に暖かく、安全な場所を巣とし、人知れず巨大なコロニーを形成します。そのため、私たちが一匹を目撃した時には、その背後には、すでに数百、数千という仲間が潜んでいると考えるべきなのです。チャバネゴキブリの発見は、単なる不快な出来事ではありません。それは、あなたの家が、この恐るべき繁殖力を持つ侵略者によって、完全な繁殖拠点、すなわち「巣窟」と化してしまっていることを示す、紛れもない最終警告なのです。
家にいる小さなゴキブリ、その正体はチャバネゴキブリ