植物の葉の上で、小さな赤い生き物を見つけた時、私たちはつい「赤蜘蛛(ハダニ)だ!」と、早合点してしまいがちです。しかし、自然界には、本当に「赤い体色を持つ蜘蛛」も数多く存在し、その多くは、ハダニなどの害虫を食べてくれる、ガーデナーにとっては非常にありがたい「益虫」なのです。害虫と益虫を間違えて駆除してしまうという悲劇を避けるために、その見分け方を正しく知っておきましょう。まず、最大の見分け方のポイントは、その「大きさと動き」です。ハダニは、体長が0.5ミリ程度と極めて小さく、肉眼ではほとんど「点」にしか見えません。その動きも、非常にゆっくりとしています。そして、何よりも、彼らは葉の裏などに「大群」で密集していることがほとんどです。一方、益虫である本物の蜘蛛は、ハダニに比べてはるかに大きく、数ミリから1センチ以上の大きさがあり、その姿形をはっきりと認識できます。動きも、ハダニのようにゆっくりうごめくのではなく、獲物を探して素早く歩き回ったり、静止して待ち伏せしたりと、俊敏で目的のある動きをします。そして、彼らが大群で葉の裏を埋め尽くすことは、まずありません。単独で行動していることがほとんどです。日本でよく見かける赤い体色の蜘蛛には、鮮やかな赤色で、腹部が尖っている「カトウツケオグモ」や、脚が長く、徘徊して虫を捕らえる「ササグモ」の仲間などがいます。これらの蜘蛛は、ハダニはもちろんのこと、アブラムシや小さなイモムシなども捕食してくれる、頼もしい庭の用心棒です。もし、あなたの植物の上で、単独で行動している、明らかに「点」ではない大きさの赤い蜘蛛を見つけたなら、それは害虫のハダニではありません。あなたの庭の生態系を守ってくれている、大切なパートナーである可能性が高いのです。パニックにならずに、まずはその大きさと動きを冷静に観察すること。それが、敵と味方を見分けるための、最も重要なスキルとなります。