我が家のマンションは、都心から少し離れた、緑豊かな公園のそばにあります。平和の象徴である鳩が、ベランダの手すりに遊びに来るのを、私は長らく微笑ましく眺めていました。時々、糞を落としていくのには閉口しましたが、「まあ、自然の一部だし」と、大目に見ていたのです。その優しさが、後に大きな間違いであったことに気づくのに、そう時間はかかりませんでした。ある春の日、エアコンの室外機の裏に、数本の小枝が落ちているのに気づきました。最初は風で飛んできたのだろうと気にも留めませんでしたが、数日後、その小枝は明らかに人工的に組まれ、小さな巣の形を成していました。そして、その中央には、一羽の鳩が、じっとうずくまっていたのです。その日から、私の平和な日常は一変しました。朝は「クルックー」という鳴き声で目覚め、ベランダは日に日に増える糞で汚れ、独特の臭いが漂い始めました。洗濯物を干すのもためらわれ、窓を開けることすらできません。私のベランダは、完全に鳩の楽園、いや、植民地と化してしまったのです。インターネットで調べると、巣に卵や雛がいると勝手に駆除できないとあり、私は途方に暮れました。結局、専門の駆除業者に依頼することに決め、数日後、完全防備の作業員の方がやってきました。巣の中には、案の定、二つの小さな卵がありました。業者の方は、自治体への申請手続きなども含めて、すべて適切に対処してくれました。費用は三万円。決して安い金額ではありませんでしたが、あのストレスから解放されると思えば、必要な出費でした。この経験から学んだ教訓は、鳩への安易な同情は禁物、ということです。彼らは、一度安全だと認識した場所には、驚くほどの執着心で居座り続けます。ベランダで鳩を見かけたら、それは平和の使者ではなく、縄張りを偵察に来た斥候兵だと思うべきなのかもしれません。