「赤い蜘蛛」という言葉から、多くの人が本能的に連想し、警戒するのが、日本でもその生息域を広げている、特定外来生物「セアカゴケグモ」でしょう。その名の通り、赤と黒の鮮やかな体色を持つこの蜘蛛は、強力な神経毒を持ち、時に人の命に関わる危険性さえはらんでいます。植物に発生するハダニ(赤蜘蛛)とは、その危険度において天と地ほどの差があり、両者を正確に見分ける知識は、自らの身の安全を守る上で絶対に不可欠です。まず、その「見た目」が全く異なります。ハダニは、前述の通り、肉眼では点にしか見えないほど小さいダニであり、その赤色も、どちらかと言えば赤茶色や朱色に近いものです。一方、セアカゴケグモのメスは、体長1センチ程度の、光沢のある黒い球体のような腹部を持ち、その背中に、まるでペンキで描いたかのように鮮やかで、くっきりとした「砂時計」や「鼓」のような形の赤い模様があるのが、最大の特徴です。この特徴的な模様さえ覚えておけば、他の無害な蜘蛛やハダニと見間違えることは、まずありません。次に、「生息場所」が決定的に違います。ハダニが、植物の葉の裏を主戦場とするのに対し、セアカゴケグモは、植物の上で生活することはほとんどありません。彼らが好むのは、日当たりの良い、暖かくて乾燥した、人工的な構造物の隙間です。具体的には、道路の側溝の蓋の裏や、ガードレールの支柱の裏側、公園のベンチの裏、自動販売機の下、あるいは家の周りであれば、エアコンの室外機の陰や、ブロック塀の隙間、放置された植木鉢の中などが、格好の巣作り場所となります。巣の形も、ハダニが出す微細な糸とは異なり、不規則で、粘着力の強い「すだれ状」の立体的な巣を作ります。もし、庭仕事などの際に、これらの場所で、特徴的な赤い模様を持つ蜘蛛を見つけた場合は、絶対に素手で触ろうとしないでください。市販の殺虫剤で駆除するか、お住まいの自治体の担当部署に連絡し、指示を仰ぎましょう。