鳩対策において、最も事態が深刻化し、そして私たちの選択肢が最も制限されるのが、ベラン-や軒先に「巣を作られ、卵や雛が生まれてしまった」場合です。鳴き声はうるさく、糞の量も増え、一刻も早く撤去したいという気持ちは痛いほど分かります。しかし、ここで絶対にやってはいけないのが、自分で巣を破壊したり、移動させたりすることです。前述の通り、鳥獣保護管理法によって、卵や雛がいる巣を無許可で撤去する行為は、明確に禁止されています。では、私たちは、ただ指をくわえて見ているしかないのでしょうか。残念ながら、原則として、その通りです。雛が自力で巣立つまでの約1ヶ月間、私たちは彼らの成長を「静かに見守る」という、忍耐を強いられることになります。この期間にできることは、非常に限られています。巣を直接刺激しないように、できるだけ距離を保ちながら、糞の清掃を行うことくらいです。清掃の際は、乾燥した糞を吸い込まないように、必ずマスクと手袋を着用し、水で湿らせてから拭き取るようにしましょう。そして、雛が無事に巣立ち、巣が完全に空になったことを確認してから、ようやく「巣の撤去」が可能になります。空になった巣の撤去は、法律上問題ありません。撤去した巣は、ビニール袋に入れて密閉し、可燃ゴミとして処分します。しかし、これで終わりではありません。鳩は、一度巣を作った安全な場所に対して、驚くほどの強い帰巣本能と執着心を持っています。巣を撤去しただけでは、翌年、あるいは数週間後には、同じ場所に再び巣作りを始めようとする可能性が極めて高いのです。本当の戦いは、巣を撤去した「後」から始まります。二度と悲劇を繰り返さないために、防鳥ネットの設置など、物理的に侵入を不可能にする、徹底的で恒久的な予防策を講じることが、何よりも重要となるのです。
巣に卵や雛が!その時、あなたができること