ある静かな夏の夜、私はリビングで読書を楽しみながら一日の疲れを癒やしていましたが、その平穏は視界の端を横切る小さな黒い影によって一瞬にして崩れ去りました。家に出る虫という存在は、どれだけ警戒していても忘れた頃にやってくる不気味な訪問者であり、その姿を一度認識してしまうと、もう二度とそれ以前のリラックスした状態に戻ることはできません。私は心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、その影が消えたあたりを慎重に探り始めましたが、家具の隙間に入り込まれてしまうと、もう手出しができないという無力感に苛まれました。そもそも、なぜ私の家に出る虫が発生したのかを冷静に考えてみると、思い当たる節がいくつもありました。前日にスーパーでもらってきた段ボールをそのまま玄関に放置していたことや、ベランダのゴミ箱の蓋が少し浮いていたこと、そして何より、最近の蒸し暑さで部屋の換気が疎かになり、湿気が籠もっていたことが原因だったのかもしれません。家に出る虫を単なる偶然の産物として片付けるのは簡単ですが、実際には自分の生活の乱れが彼らを招き入れたのだと自覚すると、恥ずかしさと反省の念が込み上げてきました。その夜、私は結局一睡もできず、翌朝一番にドラッグストアへ走り、考えうる限りの防虫グッズを買い揃えました。しかし、強力な薬剤を撒き散らす前に、まずやるべきことは部屋の徹底的な掃除であると自分に言い聞かせました。ソファーを動かし、テレビ台の裏に溜まった埃を吸い取り、冷蔵庫の下まで手を伸ばして、これまで見て見ぬふりをしてきた汚れを一掃しました。驚いたことに、普段は綺麗にしているつもりでも、家の中にはこれほどまでに虫の餌となりそうなものが溢れていたのかと愕然としました。掃除を進めるうちに、私は家に出る虫に対する恐怖心が、次第に「自分の城を守る」という強い意志へと変わっていくのを感じました。物理的な清掃に加え、窓枠の隙間をパテで埋め、網戸の破れを補修し、玄関にはハーブベースの忌避剤を設置しました。数日後、あれほど不安だった部屋は見違えるほど清潔になり、心なしか空気まで澄んでいるように感じられました。あの日現れた虫は、私に生活環境の改善を促すための警告だったのかもしれません。家に出る虫に出会うことは確かに不快な体験ではありますが、それをきっかけに自分の暮らしを見つめ直し、より丁寧な生活を心がけるようになるのであれば、それは一つの転機と言えるでしょう。今では、毎日寝る前に台所の水を一滴残らず拭き取り、ゴミを密閉して捨てる習慣が身に付きました。あのような恐怖を二度と味わいたくないという思いが、私をより規律ある生活へと導いてくれたのです。家は私たちが最も安心できる場所であるべきであり、その安全を守る責任は自分自身にあるということを、あの一匹の虫は教えてくれました。
私の部屋に家に出る虫が現れた日の記録