夏のキャンプや渓流釣りといった、自然豊かな場所でのアクティビティは格別ですが、そこには水ぶくれを伴う虫刺されの最大の犯人、「ブユ(ブヨ)」が潜んでいます。蚊とは全く異なる習性と加害方法を持ち、その被害は一度経験すると忘れられないほどのインパクトを残します。ブユは、ハエに近い仲間で、体長3~5ミリ程度の黒っぽく丸みを帯びた昆虫です。きれいな水が流れる渓流沿いなどを好み、特に気温が少し下がる「朝方」と「夕方」に活動が活発になります。ブユの被害が深刻化する最大の理由は、その独特の吸血方法にあります。蚊のように細い針で皮膚を「刺す」のではなく、彼らは鋭い大顎で皮膚を「噛み切り」、滲み出てきた血液を舐めとるように吸血します。この物理的な皮膚へのダメージが、より強い炎症反応を引き起こすのです。噛まれた直後は、チクッとした痛みと共に出血点が見られることがありますが、この時点ではかゆみや腫れはほとんどありません。本当の恐怖は、噛まれてから数時間後、あるいは翌日にかけて、遅れてやってきます。ブユが注入した唾液腺物質(毒素)に対するアレルギー反応が本格化し、患部は猛烈なかゆみと熱感を伴って、赤くパンパンに腫れ上がります。その腫れは非常に硬く、しこりのようになるのが特徴で、しばしば中心に痛々しい水ぶくれ(水疱)を形成します。この症状は非常にしつこく、完治するまでに1~2週間以上かかることも珍しくありません。特に、ブユはあまり高く飛べないため、足元、くるぶしやすねといった、地面に近い無防備な部分を集中的に狙ってくる傾向があります。アウトドアでの半ズボンやサンダルといった軽装は、自らこの小さな吸血鬼に馳走を提供しているようなもの。美しい自然の裏に潜む、この厄介な犯人の正体と恐ろしさを知り、適切な予防策を講じることが不可欠です。
犯人特定①渓流の吸血鬼「ブユ(ブヨ)」の猛威と症状