深夜のキッチンで喉を潤そうと電気をつけた瞬間、真っ白なタイルを這う黒い小さな影に私は息を呑み、それが体長わずか五ミリメートルほどのクロゴキブリの幼虫を一匹だけ見つけた瞬間であり、それまでは自分なりに掃除を徹底し清潔を保ってきた自負があっただけに、その一匹の出現は私の自信を粉々に砕くほどの衝撃的な出来事でした。その幼虫は首の部分に白い横縞があり、一見するとアリのようにも見えましたが、その触角の動きや滑らかな移動速度には紛れもないゴキブリの血統が感じられ、慌てて処理したものの、心の中に植え付けられた不安は消えるどころか、一匹いたら背後に数十匹はいるという情報を思い出すたびに増大し、その夜のうちに私は懐中電灯を片手にキッチンの隅々を調査することに決めました。冷蔵庫の下やシンクの奥を照らしてみると、普段の掃除では決して手が届かない場所に、飛んできた埃と湿気が混ざり合った不衛生な空間が広がっており、そこにはあの一匹と同じ姿をした兄弟たちが他にも潜んでいるのではないかという恐怖が現実味を帯びて迫ってきましたが、結局その夜は他に見つけることはできなかったものの、あの一匹がいたという事実は、私のキッチンが彼らにとって快適なゆりかごになっていたことを物語っていました。翌日から私の生活は一変し、食器はすべて拭き上げてから収納し、一滴の水分も残さないようシンクを毎晩磨き上げ、段ボールは即座に廃棄し、考えうるすべての隙間をパテで埋めるという徹底した防御態勢を敷いたことで、結果として数週間後に一匹の成虫さえも現れなかったのは、あの時の初動対応が功を奏したからだと思っており、あの日出会った一匹の幼虫は私に生活の甘さを教える警告者であり、最悪の事態を未然に防ぐためのメッセンジャーだったのだと今では前向きに捉えることができていますが、あの黒いタイルの上で不気味に動いていた小さな影を思い出すと、今でも掃除の手を緩めてはいけないという強い戒めが胸に去来し、一匹の目撃を無駄にしない姿勢が清潔な暮らしを支えていることを痛感しています。
私のキッチンにクロゴキブリの幼虫が一匹だけ現れた日