大切に育てている植物が、ハダニ(赤蜘蛛)の被害に遭ってしまった時、パニックと焦りから、良かれと思って取った行動が、実は全く効果がなかったり、逆にもっと深刻な事態を招いてしまったりする、残念な「NG行動」が存在します。ここでは、多くの人が陥りがちな、ハダニ対策に関するよくある間違いを解説します。正しい知識を身につけ、あなたの植物を悲劇から守りましょう。NG行動その1は、「一般的な殺虫剤(アブラムシ用など)をとにかく撒く」ことです。ハダニは、実は昆虫ではなく、ダニの仲間です。そのため、多くの昆虫に効果があるピレスロイド系の殺虫剤が、ハダニにはほとんど効かない、あるいは全く効かない場合が多いのです。それどころか、ハダニの天敵であるカブリダニやヒメテントウといった益虫だけを殺してしまい、結果的にハダニが天敵のいない楽園で、さらに大発生してしまうという、最悪の「リサージェンス」という現象を引き起こすことさえあります。対策には、必ず「殺ダニ剤」と明記された、ダニ専用の薬剤を使用してください。NG行動その2は、「一度薬剤を撒いて、それで終わりにする」ことです。ハダニは、世代交代のスピードが非常に速く、薬剤に対する抵抗性を獲得しやすいという厄介な性質を持っています。同じ薬剤を繰り返し使用していると、その薬剤が効かない、スーパー耐性ハダニを生み出してしまう可能性があります。また、多くの殺ダニ剤は、成虫には効いても、卵には効果がない場合があります。そのため、一度の散布で安心せず、作用の異なる複数の薬剤を、一週間程度の間隔をあけて、ローテーションで使用することが、根絶のための鉄則です。NG行動その3は、「葉の表面にだけ水をかける」ことです。葉水は、ハダニ予防に非常に有効ですが、ハダニが潜んでいるのは、常に「葉の裏側」です。葉の表面だけを濡らしても、彼らにとっては全くのノーダメージ。葉水をかける際は、必ず、葉を一枚一枚めくり上げるようにして、葉の裏側を狙い撃ちすることが重要です。これらのNG行動を避け、敵の性質を正しく理解した上で、戦略的に対処すること。それが、ハダニとの戦いに勝利するための、唯一の道筋となるのです。