植物に大発生する「赤蜘蛛」、すなわちハダニ。その体長はわずか0.5ミリ程度と、肉眼では点にしか見えないほど小さいですが、その被害は植物にとって致命的となることがあります。彼らは、なぜこれほどまでに厄介な害虫なのでしょうか。その理由は、彼らの驚異的な「繁殖力」と、植物を衰弱させる独特の「加害方法」にあります。ハダニは、高温で乾燥した環境をこよなく愛します。特に、気温が20~30度で、雨が少なく空気が乾燥している時期、すなわち梅雨明けから夏にかけての季節は、彼らにとって最高の繁殖シーズンです。好条件が揃えば、卵から成虫になるまでわずか10日程度という驚異的なスピードで世代交代を繰り返し、一匹のメスが数百個の卵を産むため、気づいた時にはあっという間に数万、数十万という大群に膨れ上がってしまいます。彼らの被害は、植物の葉の裏側から始まります。ハダ-は、葉の裏に群生し、その鋭い口針で葉の細胞一つひとつに穴を開け、中の葉緑素や栄養分を吸い尽くしていきます。吸われた部分は、葉緑素が抜けて白っぽい小さな斑点となり、これが無数に集まることで、葉全体がカスリ状に白っぽく変色してしまいます。これが、ハダニ被害の典型的な初期症状です。被害がさらに進行すると、葉は光合成ができなくなり、生育不良に陥り、やがて黄色く変色し、最後には枯れて落葉してしまいます。また、ハダニは移動の際に非常に微細な糸を出すため、大量発生すると、植物全体がまるで蜘蛛の巣に覆われたかのような状態になり、美観を著しく損ないます。さらに、この糸は彼らの移動手段や、天敵から身を守るバリアの役割も果たしており、一度こうなってしまうと駆除はより困難になります。この小さな吸血鬼たちは、植物の生命力を静かに、しかし確実に奪い去っていくのです。