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古本の中から現れた一匹のシミと、私の長い週末
それは、長年の夢だった、とある文豪の初版本全集を、神保町の古書店で手に入れた、喜びの絶頂にあった日の夜のことでした。家に帰り、ウイスキーを片手に、その歴史の重みを感じさせる革装丁の表紙を、うっとりと撫でていました。そして、記念すべき第一巻のページを、そっと開いた瞬間。その静寂は、一匹の小さな侵略者によって、無残にも打ち破られました。本の綴じ目の、薄暗い渓谷から、銀色に光る、体長1センチほどのシミ(紙魚)が、まるで悪夢の登場人物のように、するすると這い出してきたのです。私は思わず本を取り落とし、その場に凍りつきました。喜びは一瞬で、言いようのない恐怖と、大切な蔵書が汚染されてしまったかもしれないという絶望感に変わりました。「シミが一匹いたら、他にもいる」。インターネットで調べたその言葉が、私の頭の中で警報のように鳴り響きました。その日から、私の週末は、シミとの徹底的な戦争へと変わりました。まず、問題の全集を、一冊ずつ大きなジップロックに入れ、完全に隔離。そして、我が家の書斎と化した部屋の本棚から、数千冊に及ぶ蔵書を、全てリビングに運び出すという、気の遠くなるような作業を開始しました。本がなくなった本棚の裏には、案の定、ホコリと共に、数匹のシミの死骸と、無数の抜け殻が溜まっていました。私は半狂乱で掃除機をかけ、棚板を一枚一枚、アルコールで拭き上げました。次に、リビングに運び出した本を、一冊ずつ、ページをめくりながら点検し、ハケでホコリを払う。この地道な作業に、丸二日間を費やしました。幸い、他の本への被害は確認されませんでしたが、心身ともに疲労困憊でした。この一件以来、我が家では、古本を家に迎え入れる際には、必ず「検疫」と称して、数日間ビニール袋で隔離し、徹底的にチェックするという、厳格なルールが設けられました。あの一匹のシミは、私に、愛するものを守るためには、時に臆病なくらいの慎重さと、途方もない労力が必要なのだという、忘れられない教訓を、その銀色の体で教えてくれたのです。
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ハダニ(赤蜘蛛)の駆除はスピードが命!初期対応と駆除方法
植物にハダニ(赤蜘蛛)の発生を見つけたら、一刻の猶予もありません。彼らの爆発的な繁殖力を前にしては、「明日やろう」という先延ばしが、手遅れを招く最大の原因となります。被害の拡大を防ぐためには、発見したその日のうちに、迅速かつ徹底的な駆除作業を開始することが鉄則です。駆除の方法は、被害の深刻度によって異なります。まず、発生がごく初期段階で、被害が一部の葉に限られている場合は、物理的な除去が最も手軽で安全です。被害にあった葉を、他の部分にハダニを広げないように注意しながら、ハサミで切り取り、ビニール袋に入れて密封し、処分します。あるいは、粘着力の弱いテープなどを使って、葉の裏のハダニをペタペタと貼り付けて取り除くという方法も有効です。次に、被害が株全体に広がり始めている場合は、「水」を使った駆除が効果的です。ハダニは水を極端に嫌います。ホースのシャワーや霧吹きを使い、特にハダニが密集している葉の裏側を中心に、強い水流で洗い流してしまいましょう。これを数日間連続して行うだけでも、その数を大幅に減らすことができます。牛乳を水で薄めたものをスプレーするという民間療法もありますが、散布後に洗い流さないとカビの原因になるため注意が必要です。もし、これらの物理的な方法では追いつかないほど大量に発生してしまった場合は、最終手段として「薬剤」の使用を検討します。この時、注意すべきなのが、一般的な殺虫剤はハダニには効果がない場合が多いということです。必ず、園芸店などで「殺ダニ剤(ダニ専用の農薬)」を購入してください。薬剤には様々な種類があり、卵に効くもの、成虫に効くものなど特性が異なるため、複数の種類をローテーションで使用すると、薬剤抵抗性がつきにくくなります。使用する際は、必ず説明書をよく読み、用法用量を守って、葉の裏までムラなく散布することが重要です。