室外機やベランダの隅に鳩の巣を発見した時、多くの人がまず考えるのが「自分で駆除できないだろうか」ということです。専門業者に頼むと費用がかかるため、できれば自分で対処したいという気持ちはよく分かります。しかし、鳩の巣の自力駆除には、法律的な問題と、健康上のリスクという、二つの大きな危険が伴うことを、絶対に忘れてはいけません。第一の危険は、法律違反のリスクです。「鳥獣保護管理法」という法律により、国から許可を得ずに、鳩を含む野生の鳥類の卵や雛を捕獲したり、傷つけたりすることは、固く禁じられています。つまり、巣の中に卵や雛がいる状態で、その巣を撤去・破壊してしまうと、法律違反となり、一年以下の懲役または百万円以下の罰金が科される可能性があるのです。巣が空っぽであることが明確に確認できる場合を除き、自力での駆除は、知らず知らずのうちに法を犯してしまう危険性をはらんでいます。第二の危険は、健康被害のリスクです。鳩の巣は、単なる小枝の集まりではありません。そこは、病原菌と害虫の温床です。鳩の糞には、クリプトコッカス症やサルモネラ菌といった、人体に有害な病原菌が多数含まれています。また、巣や鳩の体には、トリサシダニやノミ、ワクモといった吸血性の害虫が大量に生息しています。適切な防護服などを着用せずに巣に近づき、これらの病原菌や害虫を吸い込んだり、刺されたりすることで、深刻なアレルギー症状や感染症を引き起こす可能性があります。さらに、巣を守ろうとする親鳥に攻撃され、怪我をする危険性もあります。これらのリスクを考えると、たとえ巣が小さく見えても、自力での駆除は極めてハイリスクな行為であると言わざるを得ません。安全と確実性を考えれば、費用がかかったとしても、専門の知識と装備を持つプロの駆除業者に依頼することが、最も賢明で、結果的に最も安上がりな解決策となるのです。