キッチンや洗面台の隅で、体長数ミリの、白っぽい、あるいは薄茶色をした、非常に小さなゴキブリのような虫を見つけた。多くの人は、「ああ、ゴキブリの赤ちゃんか。一匹くらいなら大丈夫だろう」と、ティッシュで潰して終わりにしてしまうかもしれません。しかし、もしその虫が「チャバネゴキブリの幼虫(赤ちゃん)」であったなら、その一匹の発見は、あなたの家がすでに危険な状態に陥っていることを示す、最も深刻な「赤信号」なのです。なぜなら、チャバネゴキブリの幼虫がいるということは、そのすぐ近くに、孵化したばかりの「卵鞘(卵のカプセル)」が存在し、そして、その卵を産んだ「親(成虫のメス)」が確実に潜んでいることの、動かぬ証拠だからです。チャバネゴキブリの卵鞘からは、一度に30~40匹もの幼虫が孵化します。あなたが目撃したその一匹には、必ず、まだあなたの目に触れていない、数十匹の兄弟たちが、壁の裏や家具の隙間といった安全な隠れ家の中で、うごめいているのです。彼らは、成虫とは異なり、まだ長距離を移動する能力がありません。その行動範囲は、自らが生まれた巣の周辺に限定されます。つまり、幼虫を発見した場所は、彼らの本拠地のすぐそば、いわば「玄関先」である可能性が極めて高いのです。この赤信号を無視し、目の前の一匹を退治しただけで満足してしまうことは、火事の煙が出ているのに、火元を探さずに窓を閉めるだけの行為に等しいと言えます。放置すれば、その数十匹の幼虫は、わずか2ヶ月後には全て成虫となり、次世代の卵を産み始めます。そうなれば、家の中のゴキブリの数は、もはやあなたの手に負えないレベルまで、爆発的に増加してしまうでしょう。チャバネゴキブリの幼虫の発見は、問題がまだギリギリ対処可能な段階にあることを示す、最後のチャンスのサインでもあります。この警告を真摯に受け止め、ベイト剤(毒餌)の設置など、巣を根絶やしにするための、本格的な駆除へと、直ちに踏み出すべきなのです。